たとえば「高齢運転手の交通事故について」あなたは自分の意見を言えますか。書けますか。これらは実際に保健師学校で出題されたテーマです。(保健師学校だけではなく看護学校でも頻出です)「高齢運転手は交通事故を起こす運転リスクが高いから免許の自主返納をしてもらった方が良い」「高齢者は運転能力にも問題があるし、認知症の高齢者もいるから」...そうです。たしかにそうなんです。でも...いやいや、そんな簡単なことじゃないんです。そういう答は、時に"他人事"にも見えます。誤解されるかもしれません。
高齢者にとって自動車の運転って、たとえば、どんな意味があるのでしょうか。ただの移動、買い物の手段ではなかったりします。ちょっと私事になってしまいますが、そう言えば、私の父親がまだ生きているとき、高齢で自動車の運転が危なくなりました。車道を走っているときに、道の左側に寄り過ぎて歩行者をひっかけそうになったりしていました。私は考えた末に、父親に免許返納ではなく、自動車の廃車を薦めたのですが、その時に父親が何かを「覚悟した」ような表情を見せたことを覚えています。(その翌年、父親は亡くなりました。私の父親は元気な時は自動車教習所の教官をしていました。加齢で歩くのがしんどくなってきても車であちこちに行っていました。友人知人宅に、田舎の徳島から送られてきたお歳暮とかをおすそ分けしたりしていました。スダチとかちくわとか...あ、いろいろ思い出してきました...亡くなる数年前に自治会の班長?組長とかもしていました。そういうの、あまり好きじゃないと思っていたのですけど...。)
自動車の運転ってどういう意味があるのでしょうか。もちろん人によって自動車の運転が持つ意味は違います。あっさり免許返納できる人もいれば、かたくなに拒否する人も多いでしょう。大きな失望、喪失感を持つ人も多いと思います。そこをじっくり見つめて関わるのが保健師という専門職でもあるのです。さて、このテーマであなたなら小論文をどう書きますか?(敏塾 富士)